戦国期の秩序流動化・再構築メカニズムの研究―発給文書と秩序認識の関係を中心に―
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- 村井 良介
- 研究代表者
- 岡山大学
研究課題情報
- 体系的番号
- JP18K00962 (JGN)
- 助成事業
- 科学研究費助成事業
- 資金配分機関情報
- 日本学術振興会(JSPS)
科研費情報
- 研究課題/領域番号
- 18K00962
- 研究種目
- 基盤研究(C)
- 配分区分
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- 基金
- 審査区分/研究分野
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- 小区分03020:日本史関連
- 研究機関
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- 岡山大学
- 研究期間 (年度)
- 2018-04-01 〜 2022-03-31
- 研究課題ステータス
- 完了
- 配分額*注記
- 2,860,000 円 (直接経費: 2,200,000 円 間接経費: 660,000 円)
研究概要
室町期において幕府の裁定や守護による施行は、人々が共通に参照点とする相対的な卓越性を有している。したがって、人々は幕府や守護に文書の発給を求めると考えられる。しかし、戦国期になると幕府や守護の卓越性が低下し、幕府や守護の保証では十分ではないと見なされるようになり、将軍や守護以外の地域権力による判物発給が見られるようになる。判物は発給者と受給者の一対一の関係性の中だけで機能するものではなく、周辺の第三者群の反応を整序する。その秩序を共有する人々の関係性が「私」に対する「公」である。文書なしの知行給与から、判物による知行給与への変化は、この「公的」秩序が意識されることによる。
本研究は戦国期を、単に近世の予定されたゴールに向かう単線的な過渡期としてとらえず、その一方で単に多様であるとか、無秩序なカオスとするのでもなく、多様な秩序を生み出すメカニズムを論じたところに意義がある。これにより、相対的に安定した室町期から、戦乱が常態化する戦国期への変化を、メカニズムのレベルで考察することを可能とした。かつての史的唯物論における世界史の発展法則のような見方はもはや成り立たないが、秩序の安定と流動化、そしてその再構築のメカニズムを明らかにすることで、単に戦国期にとどまらず、普遍的に社会の秩序を考察する一助となると考えられ、この点に現代社会における意義がある。