種々の骨軟部腫瘍細胞株を用いて薬剤耐性株の作成を行った。そのなかで、脂肪肉腫細胞株 、悪性末梢神経鞘腫瘍細胞株などの細胞株への薬剤の反復投与を行い、複数の薬剤耐性骨軟部腫瘍由来細胞株の樹立に成功した。樹立された薬剤耐性骨軟部腫瘍由来細胞株を用いて、薬剤耐性獲得前の細胞株と薬剤耐性獲得後の細胞株において、それぞれにおける遺伝子およびタンパクの網羅的発現解析を行い、薬剤耐性に関与する遺伝子およびタンパクの分析を行った。また、新規治療薬としてデノスマブの臨床応用が進む骨巨細胞腫や、有効な薬物療法が存在しない軟骨肉腫を対象に、薬剤の作用機序や新規治療標的に関する探索的な研究を行った。
骨軟部肉腫は希少がんであり、治療開発が進みにくい社会情勢の中で、我が国における肉腫診療のハイボリュームセンターでもある当大学で豊富な臨床検体を用いて、新規治療開発、薬剤の耐性獲得機序の解明とその予防法の探索を行ったこと、およびそれらの研究成果を学会発表や論文作成を通じて広く社会に向けて発信したことは、我が国のみならず世界中の肉腫研究に携わる研究者にとって有益なものであり、将来的に肉腫患者に還元されうる成果をもたらすことが期待される。