精子形成過程では、「次世代へ伝播される遺伝情報」を形成するためクロマチン構造の再構成が起こる。この過程で起こる精子形成固有の現象が、体細胞型のヒストンから精巣特異的ヒストンへの置換である。我々はこれまでに、精子細胞には複数の機能未知のヒストンが発現しており、そのうちヒストンH3tは精子形成の最初期に必須であることを報告し、精子形成過程ではH3tを起点に従来の知見を超えた多彩且つ複雑なヒストン置換が起こっている可能性が高いことを示した。そこで、本研究では、体細胞型ヒストンから精子特異的ヒストンバリアントH3tへの置換を起点として、精子形成過程でのクロマチン構造変換とその制御機構の解明を目指す。