共有結合性液体の高圧物性に関する第一原理的研究
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- 大村 訓史
- 研究代表者
- 熊本大学
研究課題情報
- 体系的番号
- JP10J01853 (JGN)
- 助成事業
- 科学研究費助成事業
- 資金配分機関情報
- 日本学術振興会(JSPS)
科研費情報
- 研究課題/領域番号
- 10J01853
- 研究種目
- 特別研究員奨励費
- 配分区分
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- 補助金
- 審査区分/研究分野
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- 数物系科学 > 物理学 > 数理物理・物性基礎(理論)
- 研究機関
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- 熊本大学
- 研究期間 (年度)
- 2010 〜 2011
- 研究課題ステータス
- 完了
- 配分額*注記
- 1,400,000 円 (直接経費: 1,400,000 円)
研究概要
本研究では、共有結合性液体の高圧下における動的性質および電子的性質を明らかにする目的で、第一原理分子動力学法に基づく計算機シミュレーションを行った。本研究によって得られた研究成果は以下の通りである。 (1)液体SiO_2の計算、およびその結果と液体GeO_2の計算結果との比較により、酸化物液体の高圧下における拡散特性をミクロな拡散機構から説明することに成功した。液体SiO_2と液体GeO_2は良く似た局所構造を持つが、高圧下の原子拡散特性には大きな違いがみられる。我々はこの拡散特性の違いを定量的に評価するため、高圧下における液体中のinherent structure(内在構造)に着目した。この研究により、内在構造の転移に関して液体SiO_2と液体GeO_2には明確な違いがあり、その違いが液体中の拡散特性というマクロな性質の違いの起源になっていることが明らかとなった。さらに液体中の原子拡散を内在構造の転移という視点から定量的に評価することができた。 (2)液体AsSの計算により、加圧に伴う液体AsSの分子性液体から高分子液体への構造変化の詳細を明らかにした。液体AsSは常温常圧ではAs4S4分子を基本構造とする分子性液体であり、加圧によってこの分子が壊れると共に高分子液体に構造変化を起こす。分子が壊れる際には、分子が単独で壊れるわけではなく、隣接する分子との相互作用によって、つまり、ある分子内の原子が別の分子の原子に新しい結合をつくることによって分子が壊れることが分かった。高分子液体になった後、さらに加圧すると金属化が起こる。この金属化の過程において、分子性液体の名残として局所的には共有結合的な相互作用が残っており、この相互作用が液体AsSの金属化に重要な役割を示すことが分かった。