本研究では、ロシア語・ウクライナ語・ベラルーシ語それぞれの標準語の書記体系の形成がいかなる言語イデオロギーに支えられて進展してきたのかを明らかにし、比較考察する。東スラヴ語3言語は多くの言語特徴を共有しながらも相互に独立した標準語の形式を確立しているが、標準語としての発展の方向付けにおいては様々な政治権力や宗教勢力の価値観・支配関係と密接に相関する言語イデオロギーが大きな役割を果たしてきた。標準語の構成要素の中でも特に書記体系は話者らにとって言語イデオロギーを可視化するシンボル的な存在である。本研究はそうした書記体系のあり方にも注目し東スラヴ地域を言語の側面から総合的に捉え直すことも目指す。