酵素の高い基質特異性および反応性には、個々の酵素に固有の立体構造が重要であるが、同時に構造揺らぎや遅い状態遷移といった構造ダイナミクスも、活性を向上する上で重要となる。このような酵素の動的特性は、好冷菌などで見られる活性の特異的な温度依存性や、時計タンパク質KaiCの温度補償性の実現にも寄与していると考えられる。本研究では、酵素の状態遷移過程と反応遷移経路の理論計算に基づき反応の動的機構を解明するための新たな理論的枠組みを構築する。この理論を用いて、酵素反応における活性の特異的な温度依存性や温度補償性の分子起源を明らかにする。