個体老化の顕著な表現型は,骨格筋機能低下に伴う運動,代謝機能の棄損である.これら加齢に伴う骨格筋機能の低下は加齢性筋萎縮(サルコペニア)と定義され,死亡率との高い相関性から積極的な介入研究の必要性が示されてきた.従来の研究ではサルコペニアは,成体骨格筋に存在する骨格筋幹細胞の数が激減することで骨格筋の再生が困難となることが示唆されてきた.一方で,増殖せずに組織内で保持されているはずの幹細胞数が老化に伴い減少するメカニズムについて未だ不明な点が多い.本研究では,個体老化に伴う組織全体の骨格筋幹細胞数の減少を幹細胞ニッチの機能破綻に着目し,老化細胞の形成と伝播の観点から解明を試みる.