小説と学校-19世紀イギリスにおける文学と教育
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- 玉井 史絵
- 研究代表者
- 同志社大学
研究課題情報
- 体系的番号
- JP17K02523 (JGN)
- 助成事業
- 科学研究費助成事業
- 資金配分機関情報
- 日本学術振興会(JSPS)
科研費情報
- 研究課題/領域番号
- 17K02523
- 研究種目
- 基盤研究(C)
- 配分区分
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- 基金
- 審査区分/研究分野
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- 人文社会系 > 人文学 > 文学 > 英米・英語圏文学
- 研究機関
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- 同志社大学
- 研究期間 (年度)
- 2017-04-01 〜 2022-03-31
- 研究課題ステータス
- 完了
- 配分額*注記
- 1,950,000 円 (直接経費: 1,500,000 円 間接経費: 450,000 円)
研究概要
本研究は 19 世紀イギリスにおける教育と文学のかかわりを、Dickens、Gaskell、Gissing を中心に考察した。作家たちがどのような教育観を抱き、じっさいに教育に関わったかや、当時の教育に関する様々な書物や雑誌記事と共に作品を読み解くことで、作家たちがいかに〈教え〉〈学び〉〈成長する〉という行為を表象し、公教育とは異なる文学の意義を擁護したかを検討した。特に、共感の教育という概念を軸に、それぞれの作家が自らの教育的役割を定義し、作家としての自己像を確立していった過程を解明することができたのは、本研究の最大の成果であった。
本研究では「共感の教育」という概念を軸に3人の作家たちにおける教育と文学の関りを検証した。Dickensは共感の教育を読者に施すことが小説の役割と定義し、作家としての地位を確立し、Gaskellは階級の違いを超えて共感し合う登場人物を描くことで現実社会の階級対立を解消しようとした。他方、Gissingは労働者階級への安易な共感を否定し、その現実を描写し世に知らしめることが作家の教育的使命と考えた。文学の教育的意義をめぐる作家の姿勢の変遷を辿ることができたことは本研究の意義である。こうした成果は、現代における文学と教育的意義を考察する上でも重要な知見を提供するものである。