(1)2006年8月と11月の2回神奈川県情報センター放送ライブラリー(横浜市)に二度出張した。目的は公共放送開始時期における、メディアによる音声言語資料を収集することである。同ライブラリーに収蔵されている初期のラジオ放送番組のリストを調査し、数十本のオーディオテープを聴取した。これらの番組のうち、データとして有効と判断されたものを聴取と同時に文字化した。これは脚本などが何も残されていないためである。検証したのはNHKのラジオ番組で、主なものは以下の通りである。「コロの物語」「お姉さんといっしょ」「自由の鐘」「井田家のひととき」「ラジオ小劇場『犬』」「小林秀雄インタビュー」「鐘の鳴る丘」 (2)日本初のトーキー映画「マダムと女房」を始め、当時の話し言葉が台詞として比較的よく表されている映画のビデオ、DVDを収集し,そこに表れた言語表現を文字化した。これらの作品も脚本がほとんど市販されておらず,かつアクセントやイントネーションは筆者が直接聞いて判断しなければならないためである。文字化した映画作品は「マダムと女房」「信子」「お茶漬けの味」「麦秋」「彼岸花」「人生のお荷物」「東京物語」などである。 (3)このほか公共ラジオ放送創成期である昭和初期から終戦直後までに放送されたNHKラジオドラマの脚本81点を検証した。 (4)これらの資料を検証し、現代使われている日本語の性差がこの当時どの程度あらわれているかを調査した。 (5)これらの成果を踏まえ、研究の成果を2点の論文としてそれぞれ学会誌「ジェンダー史学」および「ポリグロシア」に発表した。