日本古代葬制の考古学的研究--とくに埋葬姿勢と葬送儀礼との関わり
研究課題情報
- 体系的番号
- JP62450052 (JGN)
- 助成事業
- 科学研究費助成事業
- 資金配分機関情報
- 日本学術振興会(JSPS)
科研費情報
- 研究課題/領域番号
- 62450052
- 研究種目
- 一般研究(B)
- 配分区分
-
- 補助金
- 審査区分/研究分野
-
- 文学 > 史学 > 考古学
- 研究機関
-
- 大阪大学
- 研究期間 (年度)
- 1987 〜 1989
- 研究課題ステータス
- 完了
- 配分額*注記
- 7,500,000 円 (直接経費: 7,500,000 円)
研究概要
この成果報告書は『日本古代葬制の考古学的研究』と題するが、その内容は、埋葬姿勢に関する考古学的研究を主とするものと、古代・中世の陵墓に関する文献史料にもとづく研究の二つの柱からなる。 3年間にわたる本研究は、考古学と文献史学との連携のもとに古代の葬送儀礼を多角的かつ総合的に解明しようとするものであるが、研究分担者の一人福永伸哉は、縄文時代から古墳時代にいたる埋葬姿勢に関する資料集成を全国的に実施したが、この成果報告書においては、近畿を中心にその成果をまとめた。その要点は以下のとおりである。 縄文時代の埋葬が一般に屈葬を主流とすることは古くから知られているが、これに変化が起きるのは縄文晩期であり、まず腰の部分を伸ばす変化が生ずる。次いで弥生中期には下肢部をも伸展するものの比重が大きくなり、手の部分をも伸展させて完全な伸展葬となるのは古墳時代であることが判明した。この変化の背後には伸展葬が優位の大陸の葬制の影響が考えられ、日本における埋葬儀礼の変遷のみならず、渡来系集団の影響変度の識別においても、本研究の成果は重要な貢献をなす。 また大石雅章は古代末期から中世にいたる葬送儀礼における仏教や僧のかかわり方を研究テ-マとして追求し、とくに天皇の葬送儀礼における仏教の役割を解明した。 まず、古墳時代以来の陵墓の主流をなした墳丘墓である山陵が消滅し、これに代わって右の卒塔婆が立てられるなど仏教的要素が出現するとともに僧侶が導師や呪願をつとめ、やがて主家の御願寺などの寺院の近くで葬送が実施される。さらには寺院内に納骨される段階を迎え、12世紀初頭の院政期には遺骸そのものが法華堂に入り、寺院伽藍の一つが陵墓となるにいたる。こうして、近・現代における墳丘墓形態の陵墓の復活以前においては仏教的色彩が濃厚に認められることは注目すべきである。