バクテリアは、ヒトや植物といった真核生物が行う点突然変異や組み換えに加えて、水平伝播と呼ばれる別個体由来の遺伝子を自身のゲノムに組み込むというメカニズムによって新たな遺伝的変異を生み出している。バクテリアはさらにMGE (mobile genetic element)と呼ばれる複数の遺伝子単位で、異なる種間を水平伝播する。MGEによって病原性や薬剤耐性を含む新たな性質が獲得される例が知られている。申請者はバクテリアの性質を大きく変えるMGEが、どのような特徴をもって進化しているか解明したいと考えている。MGEの進化過程を明らかにするために、今年度は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)をモデルとして、S. aureus42系統およびその近縁種のゲノムを比較し、MGEの種類やMGE間の塩基多様度、特定のMGEの出入りを可能にしているサイトの位置や塩基配列を種内および種間で比較した。今後はデータ解析の結果をもとに、MGE領域の進化過程に対してモデルの構築を行う。得られた結果をまとめ、国際誌に投稿する予定である。 なお平成25年7月~10月にアメリカ合衆国、University of Wisconsin、laboratory of geneticsのNicole Perna教授の研究室に滞在し、バクテリアのゲノム解析法の習得および研究内容に関するディスカッションを行った。
(抄録なし)