本研究では、林産系ナノ素材として注目されている樹木由来のナノセルロースを用いて新規な幹細胞の培養基材を創発する。近年、幹細胞を用いる再生医療が実用化されつつあるが、幹細胞の未分化・分化を制御しつつ、治療に必要な細胞数まで安定して増殖させる培養手法の開発が喫緊の課題となっている。そこで、化学修飾したナノセルロースの繊維形状 (物理的特性) と多糖の化学構造 (化学的特性) が、生体内で細胞を取り囲んでいる細胞外マトリックスの特徴を備える点に着目し、ナノセルロースで物理と化学の両面から幹細胞ニッチと呼ばれる幹細胞が存在する特殊な環境の模倣を試みる。