細胞内の体高分子機械は、希薄なin vitro系よりも細胞内の混み合い環境の下で最適に稼働する。本研究では、生体高分子機械の稼働速度やエネルギー効率に対して、周囲媒質の“非平衡性”が及ぼす影響に着目して、この謎の解明に貢献する。 混み合い環境のもとで稼働する生体高分子機械は、周囲媒質との相互作用の下で非熱的な揺らぎを生み出す。非熱揺らぎの増大に伴って細胞質の流動が促進され、生体高分子機械の働きが亢進する。他方で、細胞内における非熱的な揺らぎは、系の熱力学温度を全く変えない程度の僅かなエネルギーしか持たない。本研究では、非熱的な揺らぎが細胞の挙動に影響する機序を非平衡統計学の観点から明らかにする。