本研究は、モンゴル、ロシア、中国、台湾での文献調査とオーラルヒストリー調査から得られる成果を基礎に、毛沢東の後継者と目された林彪を主人公とする「林彪事件」に焦点をあて、毛沢東を暗殺するクーデターの証拠となる「五七一工程紀要」はどのようにつくられ、それは林彪とどのような関係があったか、林彪はなぜ出国しなければならなかったか、彼の乗った飛行機がモンゴルに墜落した本当の原因、墜落事件の終息をめぐる中モ交渉、モソ交渉について、実証的研究をおこない、その全体像を明らかにする。その上で、冷戦の時代転換における林彪事件の位置づけを試みる。