本研究ではフィールドワークと文献調査を方法論に、韓国、台湾、香港および日本における「登山文化」の比較分析をおこなう。①人々はいかなる動機のもとで山に登り、山中でどのような行動を取るのか(実践)、②登山者たちは山や「自然」をいかなるものとして捉えているのか(認識)、また③行政当局は山をどのように管理するのか(制度)、という三つの問いを軸に、東アジア四地域の山と「自然」の諸相を明らかにする。 その際、西洋式の登山が日本による植民地統治と探検を経て各地に導入された歴史的経緯に着目することで、植民地支配が各地の「自然」に及ぼした影響を明らかにし、登山と人類学の隠れた関わりも批判的に検討してゆく。