「制度」(institution)は極めて広い外延をもつ概念である。それは、挨拶の仕方や死者の弔い方といったインフォーマルな慣習から、不法行為への制裁の与え方や補助金の給付手続といったフォーマルな法規範までを含む「分厚い」概念として理解される。 私たちの世界の至るところに見いだすことができる制度とはいったい何であるのか。すべての制度的現象に共通する「本質」はあるのか。いかにして制度は生成し、持続し、変化し、消滅するのか。本研究は、制度に関するこうした根本的な問いを、人間的世界の基本構造を記述する社会存在論(social ontology)の観点から考察する。