ウクライナにおける正教会は20世紀以降、分裂と対立に苦しんでいる。最大宗派であるウクライナ正教会(UOC-MP)はロシア正教会と結びつきを有する教会である。ロシアとの紛争後、国家による支援を受けた新しい正教会(OCU)が創設され、両者の対立は激化した。 2つの教会は弱者支援や軍の後援など、それぞれに積極的な社会活動を展開することで、正当性アピールに努めている。これらの活動は、結果的に、ウクライナ社会における公共性や市民社会の確立に繋がっていく可能性を有する。教会という宗教組織による国家や社会とのかかわりを再考することで、ポスト社会主義圏における公共宗教について宗教社会学の立場から検討を加える。