真核生物の細胞内でつくられるタンパク質は,それぞれ働く場所が決まっており,そのタンパク質が働くべき場所に運ばれることが,正常な細胞機能には不可欠である.これまでは,本来の局在場所とは異なる別の場所に誤配送されたタンパク質は細胞の品質管理システムにより,速やかに分解除去されると考えられてきた.申請者は,ミトコンドリア外膜に存在するAAA-ATPアーゼMsp1がミトコンドリア移行に失敗した前駆体を外膜から引き抜くことで,分解ではなく配送のやり直しの機会を与える因子であることを見出した.本研究は,Msp1を介したミトコンドリアタンパク質輸送における「校正機構」の分子基盤を解明することを目的とする.