本研究の最終的な目的は、ギリシア・ラテン文学からなる西洋古典文学作品と「場」の関係を明らかにし、作品を再解釈するとともに、「場」との関連においてはじめて露わになる作品の社会的意義を解明することにある。具体的には①聴衆に向けて歌われ語られた「ホメロス叙事詩」と紀元前5世記アテナイで上演された「ギリシア悲劇」を考察の対象として、上演の場がもたらす効果を前提に作品を再解釈する。②ギリシア文学を受け継ぎ、その性質を強く意識するラテン文学作品の考察を通じて、場とジャンルの関係を明らかにする。以上の考察を通じて、従来の研究で考えられていた以上に、西洋古典文学作品が場と密接な関連を有することを明らかにする。