鉄鋼材料を50度で時効処理することで生じる炭素クラスターは、優れた強化能を有する可能性が指摘されている。これまでの研究で、その場引張TEM法を適用することで、転位が炭素クラスターに対して大きく張り出す様子を直接観察することに成功し、炭素クラスターが高強度化に直接寄与することを実証するに至った。また、炭素クラスターを介して、ε炭化物が析出する様子が観察され、炭素クラスターがε炭化物の分散状態を左右することが判明した。 そこで本研究では、炭素クラスターを活用した高強度化を推進するべく、炭素クラスターの結晶構造を明らかにすることで、炭素クラスターの形成機構の起源を探ることを目的としている。