高温物体を急速に冷却するニーズは,産業界において強く求められている.高温物体の冷却初期段階には,高温物体表面が蒸気膜に覆われる膜沸騰現象が生じる.冷却液と高温物体との接触が蒸気膜により阻害されることから冷却速度は非常に遅い.この現象を早期に終了させることが急速冷却の一つのカギであり,クエンチ現象と呼ばれる.これまでにクエンチ現象を冷却初期段階で実現する様々な手法が検討されてきた.本研究では,クエンチ現象後に生じる冷却速度の変化の物理を明らかにすることで,タービンブレードなどに求められる表面は硬く,内部に靭性を持たせる理想的な熱処理手法を実現することを目的とする.