本研究は、第一次世界大戦(1914-1918)からその直後にかけて、福岡県福岡市と久留米市に設立されたドイツ兵俘虜収容所の世界を、グローバル・ヒストリーとローカル・ヒストリーの接合を目指す「グローカル・ヒストリー」の観点から再考するものである。具体的には、ドイツ兵俘虜を「越境者」と位置づけ、①彼らのドイツ本国や東アジアでの経験、ならびにそれらにもとづくドイツ・ナショナリズムや「文明国」意識が収容所内でどのように発揮されたか、②その動きに日本軍や地域社会がどのように対応したか、③そうした過程で蓄積された収容所での経験が、解放後のドイツ兵や地域社会にどのような影響をもたらしたのか、を明らかにする。