海産魚に寄生するフィロメトラ科線虫は宿主魚の商品価値を喪失させ、水産業上問題となる。フィロメトラ類はカイアシ類を中間宿主、魚類を終宿主とする生活環を持つ。10種以上が知られているが、中間宿主は不明である。そこで、本来の中間宿主ではないが、飼育が容易で、実験的に種々の線虫の中間宿主になることが報告されているシオダマリミジンコを代理中間宿主として用いて、線虫のふ化幼生を感染させ、さらにそれを魚類終宿主に投して生活環を完結させる。このことによって、天然の生活環が不明であっても、終宿主体内の幼生の移動、成長、成熟、生殖生態や感染サイクルの季節性などの基礎的知見を得ることができる。