本課題では福岡県の河口部を対象として,日本の環境保全・再生の観点から見逃されがちな「高層塩性湿地」に着眼した野外調査を展開する.まず,高層塩性湿地が存在する場と欠落している場の種多様性を比較し,本湿地景観がエコトーンとして機能していることを検証する.次に,塩性湿地の生物情報,および物理化学情報に基づき湿地を類型化することで,湿地タイプごとの特性を把握する.塩性湿地は多面的な生態系サービスを備えながら,近年の豪雨災害への対策のため,掘削による流下能力の確保が求められている.よって本課題は,優れた生態系サービスの譲受と,豪雨災害の回避・被害低減を両立するための重要な一手として期待される.