公共施設等運営事業における会計上の諸問題―実務対応報告第35 号によせて―

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タイトル別名
  • Accounting for Concession : PITF No. 35 Practical Solution on Operators’ in Japan
  • コウキョウ シセツ トウ ウンエイ ジギョウ ニ オケル カイケイ ジョウ ノ ショ モンダイ : ジツム タイオウ ホウコク ダイ35ゴウ ニ ヨセテ

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抄録

本稿は2017 年5 月に企業会計基準委員会が公表した実務対応報告第35 号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」(以下,単に第35 号という。)について考察したものである。公共施設等を運営する権利として規定される「公共施設等運営権」(以下,単に運営権と略し,その対価を運営権対価という。)は第35 号により無形資産として認識され,公共施設等の運営者側は企業会計制度にしたがって会計処理ができるようになった。第35 号の公表に至る過程では,運営権対価を資産として捉える考えと費用として捉える考えが検討され,公表に至っては前者が採用されることとなった。さらに運営権方式とリース取引との関係が検討され,最終的にはリース会計基準を適用しないことが決まった。以上にみる検討段階で議論された問題はいずれもPFI法制度上の政策的目的を基礎としている。資産計上の考えでは,他のみなし物権との整合性を図り,リース会計基準の適用に関してはリース取引の定義に該当する可能性を言及しつつも,運営権に対する制約条件を前提にリース会計基準を適用しないことが決定された。本研究の例示分析によれば,運営権を資産として計上すると,運営権者と管理者は互いに会計上のメリットが確認できる。運営権者の場合,費用の平準化が確認でき,管理者の場合,収益の平準化が確認できる。後者の場合,収益の平準化に加えて財政負担の軽減が考えられる。運営権を導入した改正PFI 法の狙いこそこれらの点にあると考えられる。運営権の特徴はこうした制度構造から看取できる。

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