ウィンドランダ--イングランド北部のローマ軍要塞について

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タイトル別名
  • Vindolanda: History and the Writing Tablets
  • ウィンドランダ イングランド ホクブ ノ ローマグン ヨウサイ ニ ツイテ

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説明

ウィンドランダはイングランド北部に残るローマ軍の要塞の遺跡である。ここは, ローマ帝国北部国境地帯を守った軍隊の駐屯跡がはっきりと観察できるところであるばかりでなく, 薄い木板にインクで書かれたラテン語の手紙など, ローマ時代の文書が大量に発見されたことで知られる。本論文は, 筆者が2002年におこなったこの遺跡に関する調査・研究の成果の一部であり, 遺跡の歴史と発見された木板文書について現段階で筆者が得ている情報を整理し, また文書を通してみえる帝国北部辺境地帯の実態を論じたものである。ウィンドランダ文書から知られる世界は, 属州出身のローマ軍兵士が生きた帝国辺境の空間である。彼ら兵士たちは, 地元のブリトン人を他者として差異化して得られる自己理解を持ちつつも, しかし排他的に「帝国」の支配を押しつけていたわけではなかった。ウィンドランダが位置する北部辺境地帯では, そしておそらく属州ブリタンニア全体にわたって, 「ローマ人」と「非ローマ人」などという単純な二項対立や近代的な民族概念には馴染まない, アイデンティティの流動的で可変的な世界が成立していたと考えられる。

収録刊行物

  • 西洋古代史研究

    西洋古代史研究 3 1-21, 2003-03-25

    京都大学大学院文学研究科西洋史学研究室

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