劉吶鴎の『都市風景線』について

書誌事項

タイトル別名
  • リュウドツオウ ノ トシ フウケイセン ニ ツイテ
  • リュウ トツオウ ノ トシ フウケイセン ニツイテ
  • On Lin Naou's Dushi Fengjing Xian

この論文をさがす

抄録

短編小説集『都市風景線』は、劉呐鴎の代表作である。この小説集に収められている作品はすべて、近代上海を舞台に、中流社会の肉欲に溺れる男女を中心として描写されている。劉吶鴎の近代主義観は、「戦慄と肉欲」である。それらはスリルのある肉感的な興奮に満ちた近代上海の都市風景として、主に、奔放不羈な自己中心的な女性を通して表されている。そして、登場する女性のほとんどが、「性欲の権化」という女性観で表現されており、その女性観の形成には、劉呐鴎自身が結婚以降冷遇してきた妻黄素貞の存在があり、夫の愛を切に求める彼女からの重い暗い影響があったと考えられる。また、「遊戯」、「熱情之骨」、「両個時間的不感症者」、「礼儀和衛生」の4作には、劉内鳴が上海で出会い、心から愛した日本人女性百合子との切ない恋が投影されている。そして「風景」と「礼儀和衛生」の2作には、フランス人画家アンドレ・ドランの『緑のカーテンのある裸婦』をモデルにした女性のイメージが創り上げられている。

収録刊行物

  • 人文研究

    人文研究 56 91-108, 2005-03

    大阪市立大学大学院文学研究科

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ