エスピン-アンデルセンのレジーム析出手法の再検討 : 歴史的遺制への着目と複眼的視点について

書誌事項

タイトル別名
  • エスピン アンデルセン ノ レジーム セキシュツ シュホウ ノ サイケントウ レキシテキ イセイ エノ チャクモク ト フクガンテキ シテン ニツイテ
  • Reconsideration on Method of Regime Analysis by Esping-Andersen

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抄録

エスピン-アンデルセンが「福祉資本主義の三つの世界』において, 福祉国家形成の単純な階級闘争や産業発展への還元, および単一の基準に沿った直線的な段階的発展の想定という, 従来の諸学説を批判し, 国家・市場・家族が多様に組み合わさって構成される福祉国家の階層化の状況や社会権のあり方を「福祉国家レジーム」のバリエーションとして析出したことは, 福祉国家論における画期的業績として, 広く認知されている(エスピン-アンデルセン[1], 邦訳.3ページ, 19~22ページ, 28~31ページ)。そのレジーム分析の析出プロセスを確認する作業を通して, 思想や制度に関する歴史的研究を踏まえた分析枠組みの説明力を再認識するとともに, 中心と周辺を同時に捉えようとする, 彼の複眼的な視点に着目することができた。既に1990年の著作においてエスピン-アンデルセン自身によって指摘され, 後に, 1999年に上梓された著作[2], および2001年の論文集[4]の中でさらに強議されている鋭い問題提起は, この歴史的かつ複眼的な視点によって可能となったのではないかと思われるのである。本研究ノートでは, 上記三著からエスピン-アンデルセンのレジーム析出手法を再検討し, その歴史的かつ複眼的な視点を確認した後に, わが国における最近のエスピン-アンデルセン研究の成果を概観した上で, ポスト工業経済における福祉国家研究にあたり, 特にわが国の現状分析に際して, エスピン-アンデルセンの研究視点が持ちうる意義について考察する。

収録刊行物

  • 経済学雑誌

    経済学雑誌 105 (4), 122-142, 2005-03

    大阪市立大学経済学会

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