CFROI企業評価モデルの特質と計算構造

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タイトル別名
  • A feature and calculating structure of CFROI valuation model
  • CFROI キギョウ ヒョウカ モデル ノ トクシツ ト ケイサン コウゾウ

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抄録

P(論文)

"Bartley J. Madden ""CFROI Valuation -A Total System Approach to Valuing the Firm""の文献から、キャッシュフロー投資収益率(CFROI)による企業評価モデル構築の背景とその特質ならびに計算構造を明らかにし、有用性について検討した。伝統的な資本利益率(ROI)は、最も重要な評価モデルの一つではあるが、それが会計的利益に基づくが故に、投資家の意思決定への有用性には自ずから限界がある。今日必要とされるモデルの具備すべき要件として、マデンは、グローバル化に対応した経営成果の比較可能性、企業の適正価値と株価の関係、計算に重要な外部ファクターを取り込める柔軟性とフィードバック機能を挙げ、提唱するCFROIにはそれらがビルトインされていると主張する。企業評価に重要な正味受取キャッシュフロー(NCR)の予測精度は、「将来投資」のROI水準をどのように予測するかに依存する。CFROI評価モデルでは、企業の財務諸表からCFROIを求め、それを「将来投資」のROIの推定値とする。これがCFROI評価モデルの中心思考である。CFROIを適正な企業価値計算における割引率とし、分子をキャッシュ・フローとすることで評価しようとする。そして算定精度と結果の比較可能性を高めるために、例えば将来NCRを2つに分けて捉えその各々にDCF法を適用することや、ROIのライフサイクルと再投資率を基に収束の概念を取り入れること、CFROI計算にインフレ調整後の実質値を用いることなど、種々工夫している。しかしインフレ調整は計算を複雑化させ、そのうえCFROIモデルは非現実的な仮定を置いているという問題がある。個別資産の耐用年数を加重平均するのでなく、償却資産合計を年間減価償却費合計で除して平均償却年数とする点や、将来の年間キャッシュ・フローを一定と仮定しているなどである。これらの仮定を現実適用に際して緩めた場合、目論見通りの結果が得られるのかどうか、マデンの文献では詳細な開示と解明が十分とは言えず、有用性に関する論評には実証例の積み重ねと統計的検証が必要であると言わねばならない。"

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