「悲憤詩」小考 : 研究史とその問題点

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タイトル別名
  • <<悲??>>小考
  • ヒフンシ ショウコウ ケンキュウシ ト ソノ モンダイテン

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抄録

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『後漢書』列女伝・董祀妻伝すなわち蔡?(字は文姫)の伝に、「悲憤詩」と称される詩二首が収められている。蔡?は、後漢を代表する学者蔡?の娘であるとともに、後漢末の混乱の中で数奇な経歴を残した女性としてもよく知られている。「悲憤詩」には,その劇的な人生の一端が詠まれているが,作者については古来様々な論議があった。「悲憤詩」二首以外に蔡?作と伝えられる作品に,「胡笳十八拍」がある。しかし,「胡笳十八拍」は,北宋末・郭茂倩の『楽府詩集』に初めて登場する作品であり,范曄の『後漢書』所収「悲憤詩」とはテクストの性質を異にしている。したがって両作品に対する考察方法・手順は,自ずと違ってくるであろう。テクストとしての「悲憤詩」と「胡笳十八拍」は,一応切り離して考えておきたい。「胡笳十八拍」については,作品の真偽をめぐり,1959年,中国において「胡笳十八拍」論争が大きく繰り広げられた。その中には,「悲憤詩」に関連する重要な考察も展開されている。それらも含め,「悲憤詩」はこれまで少なからず論究されてきたが,それぞれ論点・解釈・評価・批評方法等にゆれがある。なおかつ,「悲憤詩」をどう文学史に位置づけるか,『後漢書』列女伝に収載された歴史・思想的意義,あるいは作品に内在する女性性の問題等,課題は多々残されている。そのような新たな課題を果たすために,「悲憤詩」に対する従来の多様な理解をひとまずは通覧しておく必要があろう。以下,「悲憤詩」の研究史とその問題点について私見をまじえつつ述べてみたい。

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