既判力本質論について-その序論的考察-
説明
終局判決が1),確定して不服申立の途が閉ざされることを形式的確定力(formelle Rechtskraft)を有したと呼ぶ2)。そして判決で示された判断は,両当事者を拘束し権利関係はその内容通りに存在,又は不存在とされることとなる。事後,対外的にも,この形式的確定力を伴った判決内容通りに拘束力を発揮するが, これを民事訴訟法の講学上,先の形式的確定力に対して実式的確定力(materielle Rechtskraft)と呼ぶ。この効力ゆえに,たとえ先の判決と同一の権利関係が同一の当事者間で再度,問題となった場合といえども裁判所は先の判決と同一内容通りの判断をせざるを得ないのである。もっとも四二〇条以下に列挙する再審3)という制度は,この例外をなすものということができ,その判決手続に無視しえない瑕疵が存しているとか,その判断資料に重大な欠点のあることが認められる場合,当事者の申立により当該判決の取消し,及び終了した訴訟手続の遣り直しを求める特別の不服申立手段な訳である。但し,判決が確定した以上,しかも国家機関たる裁判所が関与している建て前からいって単にその判断の不当性を指適したり,その後,新証拠が発見されたとかを逐一,問題にしていたのでは確定力という概念希薄にならざるを得ない。が一方において.いかなる瑕疵をも確定力によって遮断させて一切。取り上げぬとすることも,逆の意味で制度に対する不信頼を買うこととなる。そこで適正な裁判という訴訟制度の一つの理想からは,この要求を決して捨て去ることも許されない。それ故,民事訴訟法典は再審 という手段を設け特別に重大で,それをそのまま放置しておくことは当事者にも過酷である場合を予め定めて,この法定化された場合に合致する時にのみに再審という途がひらけることとしたのである。
収録刊行物
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- 思想と文化
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思想と文化 707-720, 1986-02-05
岩手大学人文社会科学部
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050001202678384768
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- NII論文ID
- 120002028763
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles