救済者としての農民―ユダヤ人を救った人々( 6 )―

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ナチス独裁体制下でユダヤ人をホロコーストから救済しようとしたドイツ人については,これまでベルリンなど大都市の住民が主であったと考えられてきた。大都市では,ユダヤ人は群集の匿名性のなかに隠れることができるし,複数の支援者,隠れ家を確保する可能性も高かったからである。もちろん,反面としてスパイに密告される危険性もあったが。  他方,農村地帯に潜行していたユダヤ人については余り知られていなかった。一般に農民は保守的であり,ユダヤ人救済という危険を冒すことはないだろうと考えられていたからである。また,農村は人口も稠密ではないので,農家に潜行していたらすぐに密告される危険が高いからである。しかし,実際には農家に匿われ,生き延びたユダヤ人もいた。その例として,マルガ・シュピーゲルというユダヤ女性とその夫,娘の例を紹介した。彼らは複数の農民に長期間助けられ,生き延びることができたのである。

収録刊行物

  • 人文研紀要

    人文研紀要 76 177-193, 2013-10-10

    中央大学人文科学研究所

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