人間の尊厳と核心領域保護―基本権思考の空間化の危険について

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タイトル別名
  • Menschenwürde und Kernbereichsschutz : Von den Gefahren einer Verräumlichung des Grundrechtsdenkens
  • ホンヤク ニンゲン ノ ソンゲン ト カクシン リョウイキ ホゴ : キホンケン シコウ ノ クウカンカ ノ キケン ニ ツイテ

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抄録

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本稿は、ドイツ国法学における人間の尊厳のドグマーティク上の中心問題である核心領域保護を主題とし、さらに新たに導入された連邦刑事局法の規定が人間の尊厳に反しないかを検討する。その概要は、次のとおりである。  新たな安全問題を背景に、連邦憲法裁判所は人間の尊厳の保護について、私的生活形成の核心領域保護のコンセプトを打ち出した。この核心領域保護を実態的であれ理念的であれ、空間的に理解する学説が多いが、そのように解すると、判例の立場は、核心領域の絶対的保護と核心領域への侵襲が実践的に不可避であるとする、いわば矛盾を呈するものと理解されることになる。この矛盾を解消するべく、学説は、空間的理解の徹底を図る立場と、人間の尊厳の絶対性を放棄し、衡量可能性を認める立場とに分かれることになる。  このような状況に対し、ポッシャー教授は、判例の立場を擁護する。まず、人間の尊厳はまさに不可侵であることから、この保障を空間的に理解すること自体を問題視し、これに尊重要求としての人間の尊厳の保障を対置する。これは人間相互の関係を保護するものであって、国家は尊重をもって人間に対峙しなければならないことを要求する。この尊重要求がみたされるかどうかが人間の尊厳保障の中核問題であって、そのため、空間(身体・生命等)への侵襲が必然的に尊厳侵害になるわけではないとする。  そして、国家による介入措置により、私的生活形成の核心領域に意図せざる効果が生じた場合には、当該効果の回避の努力、なお効果が発生した場合の効果の限定化と補償といった努力の真摯性が認められるかが、尊重要求を満たしているかどうかの一つの基準とする。そして情報の収集段階、利用段階について具体的な判断枠組を提示する。以上の観点からすると、新たな連邦掲示庁法の規定は収集・利用両レベルにおいて問題があるとする。

収録刊行物

  • 比較法雑誌

    比較法雑誌 46 (3), 119-146, 2012-12-30

    日本比較法研究所

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