編纂者ニコラス・ロウへの道―フォリオ版からオクタボ版へ―

抄録

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1623年に刊行されたシェイクスピア・ファースト・フォリオは国王一座同僚俳優がシェイクスピア作品を1 巻に収めることを第1 の目的としたものであった。そして,座付き作者シェイクスピアをフォリオ版で刊行することは,古典作者に並ぶスタイタスをシェイクスピアにもたらすことにもなった。1685年までに版を重ねること4 回であった。第4 フォリオを受け継いだ18世紀最初の全集はニコラス・ロウにより1709年に出版された。フォリオ版1 巻本からオクタボ版6 巻本となった全集は大成功で,同年に第2 刷が出されるほどの人気であった。早くも,1714年には第2 版が出版された。ロウは編纂者として,さまざまな工夫を凝らした。全ては近代読者の便宜を図るものであった。ロウ編纂本は18世紀中に出版されることになるシェイクスピア作品のオクタボ版・複数巻・編纂本・全集約30点の先魁となった。小論は,シェイクスピア編纂本全集のフォリオ版からオクタボ版への変化が,「書物」シェイクスピアを生み出す過程について論じる。

収録刊行物

  • 人文研紀要

    人文研紀要 80 17-39, 2015-10-30

    中央大学人文科学研究所

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