19世紀前半のイギリスにおける穀物法問題 ―一国の租税支払い能力の視点から―

抄録

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本稿の目的は,穀物法と一国の租税支払い能力という問題がマルサスとリカードウ以後にどのように論じられたかを跡づけることである。分析対象は,(1)パンフレット作家の諸議論と (2)古典派経済学者の中でこの問題を詳細に論じたマカロクである。(1)に関しては,①すべて穀物法批判者によるもので,穀物法撤廃は一国の租税支払い能力を高めると結論しているが,②リカードウからの影響はほとんど認められず,③一国の租税支い能力の測定尺度も異なっていた,という 3点が明らかにされる。(2)に関しては,マルザスやリカードウと同じく,マカロクは貨幣価値の騰落が租税負担に及ぼす影響を論じた。だが,彼が租税額/国民所得という枠組みで一国の租税支払い能力を論じた際,穀物法との関連は中心論点ではなかったし,貨幣価値の変化と生産条件の変化という穀物価格変動 の二要因の区別を理論的基礎としていたわけでもなかった。これらはマルサスやリカードウとの相違点とみなせる。こうした研究は,今日の日本の政策論議と絡めることも可能である。

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