住宅ローン媒介の法規制とその展望――その3 ――アメリカ編(1)ドッド=フランク法に至る法規制の概観――

抄録

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アメリカでは,サブプライムローン問題,世界金融危機への対応として2010年ドッド=フランク法が制定され,モーゲージブローカーなどに対するローン媒介業務規制が整備されてきた。  小稿では,住宅ローン媒介業務の法規制に関する国際比較の一環として,アメリカの住宅ローンの組成,媒介業務に係わる消費者保護規制の流れを概観している。  1960年代の公民権運動に端を発し,1970年代以降のインフレ・高金利環境の下で住宅・住宅ローン領域において,より広範な消費者保護規制としてローンの借り手への情報開示規制が強められ,1968年貸付真実開示法(TILA:レギュレーションZ)が導入された。また,住宅売買の決済に係わる公正取引,キックバック禁止などの行為規制を内容とする1974年不動産決済手続き規制法(RESPA:レギュレーションX)が導入され,それぞれ連邦準備制度理事会(FRB)と住宅都市開発省(HUD)による規制監督体制が整備された。これらは,単なる情報開示を求める規制から次第に行為規制としての性格を強め,2010年ドッド=フランク法において,連邦レベルで参入規制,行為規制,情報開示規制として整備された。  特に,1990年代にすでに社会問題化していた「略奪的貸付(predatory lending)」を契機に成立した1994年住宅所有・財産保護法(HOEPA),ノースカロライナ州法などの住宅ローン商品規制を含む各種の行為規制は,最終的にドッド=フランク法下でFRBにおける金融消費者保護局(CFPB)を通じた統一的規制監督体制に結実したことを示している。  今日においても住宅ローン組成業務(origination),媒介業務(broking)を担うモーゲージオリジネーター,モーゲージブローカーで構成される産業組織は,その集中度も低く,著しく分散性が強いという特性を有しているが,サブプライムローン問題は,消費者と専門業者との間の情報の非対称性と消費者の不利益を是正する消費者保護規制を強く求める契機となったことが示されている。

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