北海道利尻島におけるクロマグロ(Thunnus orientalis)漁業の繁栄と衰退

書誌事項

タイトル別名
  • ホッカイドウ リシリトウ ニ オケル クロマグロ Thunnus orientalis ギョギョウ ノ ハンエイ ト スイタイ
  • Prosperity and disappearance of pacific bluefin tuna (Thunnus orientalis) fishery around the coast of Rishiri Island in northern Hokkaido in Japan

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説明

北海道周辺に来遊するクロマグロは摂餌回遊をしている個体群である。北上してくる北海道周辺のクロマグロの胃内容物にはイカナゴがもっとも多く出現することからみて,利尻島周辺海域に来遊していたクロマグロ資源も餌としてイカナゴを求めて摂餌回遊を行っていたと推測できる。実際,クロマグロ漁業が盛んだった頃の利尻島付近のイカナゴの漁場とクロマグロ漁場は一致しており,また,漁獲高からみたイカナゴの減少とクロマグロ漁業の衰退は一致している。 利尻でイカナゴ資源の減少の理由は2つあり,1つはイカナゴ自体の乱獲,もうひとつは利尻周辺海域での流氷量の減少による生産性の低下が考えられる。イカナゴは狭い海域に留まる性質があり,利尻周辺での食物連鎖システムの変動と餌生物の乱獲が,直接的に同海域のクロマグロ漁業に影響を与えたことになる。餌を求めて遠く太平洋から北上してきた日本海のクロマグロは,餌のなくなった利礼海域を避けて津軽海峡を抜けて遠くアメリカまで渡洋回遊をする。このため日本海から太平洋に抜け道にあたる青森県大間海域で,本来利尻島で漁獲されるはずのクロマグロが最近漁獲されるようになったのである。利尻でのクロマグロ資源がなくなったわけではない。

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