中世大越の地方支配~唐宋変革期「小帝国」の比較史への問題提起~

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タイトル別名
  • Local Rule in Medieval Dai Viet

抄録

この報告では最初に問題提起として、(1)「東アジア史」を世界の学界でおこなわれている「グローバル・ヒストリー」の議論と斬り結べるものにするために、中華史観、周辺側の一国史観、自国語でしか発表しない発表方法などを改める必要があること、(2)そうした視点にもとづく越・韓・日(・琉)の比較研究には、基層文化と家族、財産所有、開発と農村社会、中華帝国の周辺での共通の経験、ジェンダーや儀礼に着目する王権論と政治史など興味深いテーマが多数あること、の2点について簡単に話す。  つぎに本論として、大越(ベトナム)の李朝(1009-1226)の中央政権が地方をどうやって支配したかについて紹介する。各地方の府・州などの行政単位は基本的に在地勢力にあたえた名誉称号だが、軍管区としての「路」が新たに設置され、また一部の府・州では皇帝の近侍官による統治が実現する。他方、皇帝の頻繁な行幸と行宮のネットワーク、地方首長に「降嫁」した公主たちの働きなど、非律令制的なチャンネルが、地方支配に大きな役割を果たしていた。こうした唐制をローカライズする方法について、高麗などとの比較ができれば幸いである。

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