キャリア教育と若年者離職率 : 統計分析からの一考察

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  • キャリア キョウイク ト ジャクネンシャ リショクリツ : トウケイ ブンセキ カラ ノ イチ コウサツ
  • Career Education and Turnover Rate of the Youth : Consideration by the Statistical Analysis

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抄録

キャリア教育の言葉が登場して約15年が経過した。厳しい就職環境の時代を経てそれは社会全体に認知されるまでになった。経済産業省が実施した調査(キャリア形成支援/就職支援についての調査結果報告書(2009年))によると、ほぼ100%の4年制大学(医学・芸術系等を除く)がキャリア形成支援教育を実施する1。さらに2011 年に大学設置基準は改定され、キャリア教育が大学で義務化されるに至った。このようにキャリア教育は加速しつつ普及している。だが一方で、新規大卒3年以内の離職率は約3 割を維持し、高止まりの状況にある。果たしてキャリア教育の効果は望めないのか2。近年、大学は入試多様化により、これまで入学して来ない層まで受け入れるようになった。このことが教育環境を著しく劣化させた恐れがある。事実、統計分析を行うと、偏差値の低い大学ほど一般入試比率は低く退学率は高い。また新規大卒者の数年内における離職率ではどうか。ここでは企業規模により差が見られ、規模が小さくなるほど離職率は高くなる。そして正規就職率が偏差値と関係しない統計結果に照らすと、次のことがいえるだろう。ここ数年、従業員規模の大きい企業での離職率は低下しており、(求人動向を勘案しても)キャリア教育の効果が表われたとの見方もできる。かたや従業員規模の小さい企業では高い離職率を維持する。従って近年の若年者の高い離職率は大学が入試を容易にし、学力の乏しい層まで受け入れたことに起因した可能性がある。そのため“大学の質保証”においては、入学試験のあり方も含めた十分な議論を行う必要があろう。

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