Impairment as a fresh-start

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  • 減損と「再投資」 : 「期待の変質」を伴う評価の切り下げ
  • ゲンソン ト サイトウシ キタイ ノ ヘンシツ オ トモナウ ヒョウカ ノ キリサゲ

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前稿「減損と『見積もりの修正』」とは異なり,本稿では,金銭債権からの資金回収が滞った結果,旧来とは異なるやりかたで資金の回収を図るのが最善の選択となるケースを取り扱う。ひとくちに金銭債権といっても,約定どおりの資金回収が見込まれるものと,相応の自律的な努力を払わなければ返済を期待できないものとの間には,無視しえないほどの違いが認められることもある。見かけのうえでは同じ金銭債権を継続保有しているだけのことであるが,実質的には減損を機に財としての特性が変質してしまうのである。金銭債権からどのようなキャッシュフローを期待し,その実現を図るためにいかなる方策をとるべきか,減損の前後で「投資のねらい」に大きな変化が生じた場合の処理が,本稿の主たる検討課題である。 前稿においては,正常な金銭債権と同様,減損の生じた金銭債権についても「利息法」と呼ばれるやりかたで投資の成果をとらえるのを与件とできるようなケースを想定し,減損の事実を「利息法」のフレームワークにどう反映させればよいのかを論じてきた。これに対し,本稿で採り上げるようなケースでは,もはや利息法の継続適用に固執する必要は認められない。むしろそこでは,投資に寄せられた期待の変質に応じて,新たな業績評価の枠組みへと移行する必要が生じてくる。 そうなると本稿においては,旧来の業績測定をいったん打ち切り,新たな「投資のねらい」をもとに成果をとらえ直す場合の処理に主眼が置かれることとなる。業績評価の「やり直し」が求められる以上,そこでストック評価額の修正が必要となってくるのは想像に難くない。ここではまず最初に,減損が生じた時点の簿価修正(評価の切り下げ)として,どのような測定操作が求められるのかを検討する。 こうした作業に引き続き,本稿では,減損をきっかけとして「投資のねらい」が変化するのはどういうケースなのか,できるかぎり具体的な事例にひきつけて解説する。改めて考えてみれば,「投資のねらい」の変化を引き起こすような減損と何の変化も引き起こさないようなものとが併存する旨,これまでは「超越的に」論じてきた。資金回収に困難が生じたのをきっかけとして,貸し手企業がどういう対応策を講じたとき「投資のねらい」が変化したといえるのか,その点に関する記述はいまだ十分とはいえない。この点をできるかぎり明確にするのがもうひとつの眼目である。投資に寄せられた期待が変質するケースを具体的に列挙できれば,「ねらい」に変化がみられないため「見積もりの修正」という形で減損の事実を期間損益に反映すべきケース(前稿を参照)についても,経験的な事実との対応関係が明らかになるものと見込まれる。 減損を契機とする貸し手のどのような行動が「ねらい」の変化と対応しているのか,具体例を掲げることができたら,それに続いては,それぞれのケースで減損以降,どのような業績評価が行われるのかに議論を進める。後に詳述するとおり,「投資のねらい」が変化したのをきっかけとする簿価修正は,「ねらい」が変化した原因のいかんにかかわらず,画一的な手続となる。これに対し,減損の発生後,どのような事実に着目して債権投資の成果をとらえるべきかをめぐっては,減損の態様次第でさまざまな方法を想定できる。いかなるケースにおいて減損以降の業績をどう捕捉することになるのか,両者の対応関係を明らかにするのが,本稿における最後のねらいである。

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