宋祁と古文

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  • ソウキ ト コブン

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『新唐書』の編修者として知られる北宋の宋祁(九九八~一〇六一)の場合を例として、詩文や筆記等の資料から、その文学観、特に古文や唐代文学の受容の様相を中心に検討し、彼を含んだ北宋仁宗期における文学のあり方の一側面について考える。『新唐書』の編修は、古文復興という大きな流れとも関わっていたと思われるが、また宋祁自身にも、文章修行のためのよい機会を与えることにもなったらしく、彼は、『新唐書』の編修に従事した十年余りの間に数多くの文章を読んで熟考することにより、あらためて文章を書くことの難しさを痛感し、さらに自分が五十歳以前に書いた他人を模倣するばかりの文章を恥じて、文体の個性の重要性に気づいたと述べている。さらに宋祁が文章の独創性を重視するのは、自己の文章制作についてだけではなく、過去の作者による既存の文章を批評する場合にも共通しており、その際、とりわけ独創性の高い文章の作者として、韓愈に高い評価が与えられている。また宋祁及び彼と同時代に活動し、彼の身近にいた人物でもあり、かつ当時における古文復興の代表的な人物でもある歐陽脩は、彼らの古文制作において、韓愈以来の道統の継承としての意義を意識しつつも、むしろ、それまでの諸家をふまえつつ、それらを止揚した独創的な「自立之言」「一家之言」を生み出すことを強調し、宋祁に近似する態度をとっている。韓愈らによる復興の後、一旦は廃れた古文は、この北宋期に歐陽脩らによって再び復興されたが、それは「古」や唐代の古文を単純に模倣しようとするものではなく、「古」からの儒教的理想の継承を前提としつつも、その文章表現においては、より自由な個性を発揮することを志向し、それはさらに次代以降の人々によって継承され、豊かな実りを生み出していったと思われる。

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