〈私〉の消去の後に7 : 性起としての世界と人間

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  • ワタクシ ノ ショウキョ ノ アト ニ 7 セイキ ト シテ ノ セカイ ト ニンゲン

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抄録

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本稿の目的は、〈私〉を立てずに人間の経験を体系的に説明する理論を構築することである。その理論は、性起に関する理論という形で構築されることになる。そして、我々の性起に関する理論は、物質概念の更新を要請する。その要請は、「死一物から生一物へ」というスローガンによって表現される。ここで言う死一物とは、近代自然科学の形成とともにもたらされた物質概念であり、生―物とは、量子論、自己組織化論、内部観測論、大森荘蔵の知覚的立ち現われ論等がそれぞれ死一物に対置して呈示してきた物質理解を総合することによって、我々が措定した物質概念である。我々の性起に関する理論は、物質は死一物ではなく生―物であると主張する。そして、生一物としての物質は、以下のような性質を持つ。 i)それが「ある」という事態が、極微の次元における生成論的な生成と消滅によってもたらされている、ii)新たに生成したり消滅したりする、iii)能動性を持つ、iv)それ自体で知覚的に現前する、v)有意・有色・有情である、vi)その総体が不可分の単一体をなす。前々号、前号では、こうした生一物概念を明確にする作業の一環として、生―物概念の源泉となった量子論、自己組織化論、内部観測論の物質理解がどのようなものであるのかを論じた。引き続き本号では、同じく生一物概念の源泉となった大森荘蔵の知覚的立ち現われ論の物質理解―一「物質はそれ自体で知覚的に現前する」、「物質は感覚的性質や表情や意味をそれ自身に内属させている」とみなす物質理解―一を、我々による追加説明を加えつつ整理していきたい。

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