迷惑の意味の変遷についての一考察

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説明

迷惑という語は中国経由で入って来た漢語である。現代における意味は中国ではもともとの仏教語が有していた意味の色彩を残しているのに対して、日本語においてはもともとの意味あいが薄れて、一見全く異なった意味のように見える。もともと、字義どおりの「まよふ、まどふ」の意で用いられていたこの語は、中世後期に至り、特に当時の口語を反映するキリシタン資料では「困惑」や「難儀」や「苦悩」の意でも用いられ、同じく口語を反映する狂言などでは「他者の行為によって引き起こされた不快の感情」や「己の行為が他者に不利益をもたらしたことによる申し訳なさ」を表明する語へと意味の幅を拡大し、意味的力点を漸次移しつつ現在の意味に至っていると思われる。その意味の拡張の軌跡を実際の用例に辿ることができる。

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