林木のさしきに関する研究 : とくに, 植物ホルモンのバランスと発根との関係

HANDLE Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Studies on the Cuttings of Forest Trees : Especially , Relationship between the Rooting Responses of Cuttings and the Balance of Phytohormones in Cuttings.
  • リンボク ノ サシキ ニ カンスル ケンキュウ トクニ , ショクブツ ホルモン ノ バランス ト ハッコン ト ノ カンケイ

この論文をさがす

抄録

本報告はさしきの研究の一端としてホルモンと発根との関係を主として発根の容易なポプラおよびメタセコイアについてしらべた結果と, それによってえられた知見をもととしておこなった発根困難樹種アカマツに関する実験結果をとりまとめたものである。 I. ホルモンと発根 (1) メタセコイアの樹冠の上部と下部とからとったさしほのホルモンをアベナ ・ テストによってしらべ, 発根のすぐれている樹冠下部からのさしほが発根のわるい樹冠上部からのさしほよりも生長促進物質量が多く, 生長抑制物質量がすくないことをみとめた。 また, スギやメタセコイアのさしきでは採穂母樹の年令がわかいほどよく発根する傾向があるが, これらの樹種では年令のわかい母樹からのさしほほど生長促進物質の生長抑制物質にたいする量的な比率 (ホルモンの比率) のたかい傾向があった。 (2) ホルモン処理によってホルモンの比率を適当にたかめると発根が促進せられたが, その効果はさしほの内的条件や環境条件によって左右せられる。 (3) ホルモン処理の効果はもともと発根に非常に適している場合や不適当な場合には小さく, 無処理でおよそ30%の発根率を示すようなさしほでもっとも大きかった。 II. アカマツのさしき 約10 ~ 13年生のアカマツの側枝を切断処理して発達させた萠芽枝の発根に関係すると考えられる内的条件と普通枝のそれとを比較検討した。 (4) 萠芽枝は普通枝よりもホルモンの比率がたかかった。 (5) 萠芽枝は普通枝よりもCの含有量がすくなく, Nの含有量は多かった。 したがって, C-N比は萠芽枝のほうがひくかった。 (6) 萠芽枝と普通枝との水浸出液にはポプラのさしきの発根を阻害する作用はみとめられなかった。 (7) 萠芽枝からとったハタバは普通枝からとったハタバよりもさしつけ後しばらくのあいだの水分収支の均衡がよくたもたれていた。 要するに萠芽枝は普通枝よりも発根に適した内的条件をそなえているようであった。 そこで, 萠芽枝のさしきの発根の良否をしらべた。 (8) 5月中旬に母樹の側枝を切断処理して発達させた萠芽枝を処理当年の秋と翌春にさしきし, 普通枝よりもかなりよく発根することをみとめた。 秋ざしと春ざしとでは春ざしのほうがよかった。 (9) 萠芽枝は母樹を処理する時期によって生長に差を生じ, 5月中旬頃までに処理した場合には処理年内に十分な生長をとげたが, 6月以降に処理した場合にはその年内に十分生長しなかった。 処理年内に十分生長した萠芽枝はよく発根したが, 未発達の萠芽枝はあまりよく発根しなかった。 (10) 萠芽枝のさしほの芽の数を調節した結果, もっとも小さい芽1個だけつけたさしほがもっともよく発根し, 次いで全部の芽をとってしまったさしほがよく, 全部の芽をつけておいたさしほがもっともわるいことをみとめた。 (11) 萠芽枝のさしきのホルモン処理はかなり効果があった。 とくに, 1個だけ芽をつけておいたさしほにおいてもっとも効果があった。 次に環境条件について実験した結果を要約すると次のとおりであった。 (12) さしき用土中の有機物量は多いほどわるく, さしほの枯死腐敗率がたかくなり, 発根率が低下した。 (13) 75%以上の庇陰下に常時さしつけておくとさしほの枯死率がいちじるしくたかくなり, 発根率が低下した。 25 ~ 50%の庇陰を常時あたえると全く庇陰をあたえなかった場合よりもさしほの枯死は多少すくなくなったが, 発根はいくぶんわるくなった。 (14) 発根に必要なさしき床の温度はおよそ23 ~ 30℃前後であろうと考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ