木材の細胞膜構造と収縮異方性 (I) : 仮道管の径接細胞膜におけるリグニン分布

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タイトル別名
  • The Transverse Anisotropic Shrinkage of Wood and Its Relation to the Cell Wall Structure (I) : The Lignin Distribution in the Radial and Tangential Walls of Coniferous Wood Tracheids

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説明

木材横断面における収縮異方性の原因としては, 種々のオーダーの構造単位に関連してのものが考えられるが, 細胞膜の非晶構造, とくにリグニン分布にその要因を求めた例は少ない。そこで, 本報では針葉樹材スギ・モミについて, フロログルシン-塩酸によるリグニン呈色反応を利用し, 細胞膜中のリグニンをミクロフォトメーターで定量化して, これと微小木口切片 (厚さ30μ) の収縮異方度との関連を追求した。これによって, 細胞膜構造のうち, リグニン分布状態が収縮異方性におよぼす程度を検討して, 2, 3の知見を得た。(1) 形成過程の早材および晩材仮道管において, 接線膜よりも半径膜の呈色濃度が, 生材でとくに大きい。(2) いったん乾燥した成熟材の早材および晩材仮道管においても, 半径膜の呈色濃度が, 接綜膜のそれよりも大である。(3) 呈色濃度の接線膜に対する半径膜の比 (I_r1/I_t1>1) は, 同一年次で晩材の方が大きい。(4) いったん乾燥したスギの辺材および心材の微小木口切片について, 接線収縮の半径収縮に対する比 (βt/βr) と補正した呈色濃度比 (I_r_1/I_t_1) の関係を求めた (Fig. 5)。この結果から次のことが理解できる。すなわち, βt/βrとI_r_1/I_t_1の関係は, いずれも明らかに直線的で, 関係直線は, (ii) 早材仮道管においてはいずれも45°の線に近く位置するが, 晩材仮道管においてはいずれもI_r_1/I_t_1軸側に偏る。したがって, これらのもつ意味を考えると, 心辺材とも早材仮道管の横断面における収縮異方性に, 径接細胞膜におけるリグニン分布の差がおよぼす影響は大きく, 晩材仮道管では, リグニン分布の差も関与するが, ほかにβtを小さくするか, βrを大きくする他の因子の影響が著しいものと思われる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1050001335799490688
  • NII論文ID
    120005515652
  • NII書誌ID
    AN00061068
  • ISSN
    0368511X
  • HANDLE
    2433/191449
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    departmental bulletin paper
  • データソース種別
    • IRDB
    • CiNii Articles

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