ゾンビ映画史再考

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タイトル別名
  • Reconsideration for the historical view of zombie films
  • ゾンビ エイガシ サイコウ

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抄録

ゾンビとは, 歩く死者, 生きている死者と呼ばれ, それは, 腐敗した身体を引きずってのろのろと動き, 集団で人問に襲いかかる. 噛み付かれた人間は, 生きたまま肉体を食われるか, うまく逃げたとしても, 自らがゾンビへと変化し, 理性や感情を失い, 他の人間を襲いはじめる. このようなゾンビ像は, 1970年を前後して, ジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リピングデッド5をはじめとする三部作の世界的なヒットによって生み出された. しかしながら, 2002年以降のゾンビ映画は, そのより凶暴な特徴により<走るゾンビ>や<ゲームゾンビ>と呼ばれ, 従来のものとは異なるものとして説明されている. 本稿では, ゾンビ映画史を振り返りながら, 1930年頃に西カリブ諸島を舞台に生み出されたゾンビが, ロメロの作品によって, その造形と物語構成の点でいかに変容したかを説明する. この時, ロメロゾンビとは, 前述の特徴に加え, 人間に似た怪物, という特徴を獲得していた.一方で, ロメロゾンビは当時のホラー映画におけるゴアジャンルの影響を受けることで, より残虐性を増したまた別のゾンビ像を形成した, つまり, 人間に似た怪物としてのゾンビと, 腐敗しよりグロテスクなゾンビである.双方はともにそれぞれの仕方で観客の恐怖を煽った.く<走るゾンビ>においては, この二種類のゾンビが様々な仕方で一つの映画の中に共存している, この共存の特殊な事態にこそ<走るゾンビ>の特異性が存在することを明らかにする.

収録刊行物

  • 人間・環境学

    人間・環境学 25 55-68, 2016-12-20

    京都大学大学院人間・環境学研究科

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