非人称のエス --フロイト精神分析における理論と実践のずれをめぐって--

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タイトル別名
  • Impersonal Es: On the Gap between Theory and Practice in S. Freud's Psychoanalysis
  • ヒニンショウ ノ エス : フロイト セイシン ブンセキ ニ オケル リロン ト ジッセン ノ ズレ オ メグッテ

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抄録

本稿の目的は、S.フロイトの「エス」概念に着目して、精神分析の理論上の変遷に見出される「ずれ」と、そのような理論と実践とのあいだに見出される「ずれ」を明らかにすることである。第一に、精神分析の実践とは、<反芻処理>、すなわち、無意識の意識化を介した自己自身の人生史の制作作業であることを示す。第二に、<欲動の心的代表>を中核に据えた第一局所論が、精神分析の実践を明晰に理論化している点を明らかにする。第三に、第二局所論への移行は実践に対して、エスのあったところに自我を成らしめることと、エスをエスのまま語り続けることとの、一見矛盾する要請を課すことを示す。最後に、最晩年のフロイトが見通した「近づきがたいエスの核」の含意を検討する。考察の結果、非人称のエスの声を聴き取ったうえで構成される新たな<私>、さらにはそうした<私>への変容を可能にする実践のあり方の解明が、次なる問いとして導き出される。

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