書誌事項
- タイトル別名
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- ゲンダイ カイケイ リロン ノ 2ルイケイ
- Gendai kaikei riron no 2ruikei
- Two Categories of Current Accounting Theories
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説明
type:text
現行会計実践は,制度的には,取得原価,時価,およびアキュムレーション法に基づく増価(いわゆる償却原価) が共存する併存会計になっているが,問題は,言うまでもなくその理論的根拠である。その点に関して多くの説明理論が提唱されているが,しかし,今日までのところ,そのどれがもっとも合理的に説明しているか,という点についてはまったく明らかになっていない。その主因は,それら諸説明理論に関する比較検討がほとんどなされていない点にあると言ってよいであろう。したがって,そうした試みがなされなければならないが,それは今後の課題として,ここでは,近代会計理論から現代会計理論への展開という視野のもとで,筆者の視点から併存会計を合理的に説明する理論体系の在り方を模索することにしたい。ある理論体系が会計実践を合理的に説明していると言い得るためには,そこにおける諸概念が論理的に首尾一貫した形で関係づけられていなければならないが,現在提唱されている諸説明理論は,必ずしもそうした要件を充たしていない。つまり,多くの説明理論には,この点に関する理論的誤謬が,存在しているのである。ここでは,当面の問題意識にそって,① 投資家の意思決定への役立ちの視点から売買目的の有価証券の時価評価を正当化する見解,② 売買目的の有価証券に保有損益と売買損益とを認める見解,③ (主観のれんの有無による事業資産・金融資産分類に依拠して) 事業資産の評価原則を取得原価とみる見解,そして④ 減損会計において割引現在価値を主張する見解の4点を取り上げる。問題は,そこに内在する理論的な欠陥が,いわば偶然的なものなのか,あるいはある種の必然的なものなのかという点である。結論的には,後者であると筆者は考えている。そこで,近代会計理論から現代会計理論へと展開した時代背景のなかで,そのある種の必然性を明らかにし,そのことによりそうした理論的欠陥を是正した妥当な説明理論の方向を示したい,というのが本稿の意図である。近代会計理論を現代会計理論へと推進した潮流としては,A金融商品(資本市場) の拡大, B情報社会の進展,Cある会計の説明を企図した伝統的会計理論の行き詰まり,といったみっつの要因が重要であるが,その受け止め方は,けっして一様ではなく,大別して,ふたつの方向が想定できる。ひとつの方向は,Aについては投資家見地への転換, Bについては情報の会計化,そしてCについては(ある会計とは無関係に) あるべき会計の対象化といった内容をもち,一言で言えば,規範的な理論の構築として特質づけてよいであろう。これが,今日の主流であるが,しかし,それとはまったく別の受け止め方もあり得る。すなわち,Aについては投資対象(計算対象) の拡大, Bについては会計の情報化,そしてCについては(ある会計の根底に存在するものとしての) あるはずの会計の対象化といった内容をもち,概括的に言えば,説明的な理論の構築として特質づけられるであろう。冒頭に述べた4点に関する理論的欠陥は,前者の規範的な理論類型に由来しているというのが筆者の理解である。しかし,現行会計実践の説明理論を企図するかぎり,それらの欠陥は是正されなければならず,そのためには,後者の説明的な理論類型に転換する必要がある。そこで,最後に,この類型に属する企業資本等式説に従って,その具体像を素描した。
笠井昭次教授退任記念号
収録刊行物
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- 三田商学研究
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三田商学研究 47 (1), 1-29, 2004-04
慶應義塾大学出版会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050001337390753408
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- NII論文ID
- 110000939905
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- NII書誌ID
- AN00234698
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- ISSN
- 0544571X
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- NDL書誌ID
- 7022747
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- IRDB
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