地方財政の自立と自律 : 大都市における財政的自律性の考察

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タイトル別名
  • Independence and Autonomy of the Local Public Finance : A Study on Financial Autonomy of the Large Cities in Japan
  • チホウ ザイセイ ノ ジリツ ト ジリツ ダイトシ ニオケル ザイセイテキ ジリツセイ ノ コウサツ

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抄録

現在の地方財政の危機的状況を象徴的に示す事象は,未曾有の地方債残高(現在高)の累積である.引受先の大半を起債自治体外部の資金に依存する地方債にあっては,将来の住民に過度の財政負担を負わせないという意味で「規律ある財政運営」を行うためには,将来における地方債の元利償還金(公債費)の現在価値が,将来にわたって公債費に充当しうる地方税収入の現在価値の合計の範囲内に収まるように地方債残高を管理していくことが,基本的原則となる.本稿では,このような「財政規律ルール」が,単年度の地方税収に対する地方債残高の比率を一定限度内に抑えることに相当することを示し,この比率の水準によって地方自治体における財政規律の程度を推し量ることができることを指摘する.その上で,全国の都市の決算データを用いて,人口規模によって単年度の地方税収に対する地方債現在高の比率を説明する回帰式を推計する.推計の結果は,財政力指数の低い小規模都市のみならず,財政力指数の高い大都市(政令指定都市)においても,単年度の地方税収に対する地方債現在高の比率が高い,全体としてU字型の関係が観察されることが明らかとなった.このことは,一般財源の多くを地方交付税に依存し国への財政的依存性が高いために自律的財政運営の困難な小規模自治体のみならず,国からの財政的自立性の高い大都市においても規律ある財政運営が行われて来なかったことを示唆しており,財政的「自立」が,必ずしも,財政運営の「自律」性を保証していないことを意味している.

収録刊行物

  • オイコノミカ

    オイコノミカ 47 (2), 19-34, 2010-12-01

    名古屋 : 名古屋市立大学経済学会

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