「愛するものについてうまく語れない」− 『わがスタンダール』を通じて見たスタンダリアン大岡昇平 —

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タイトル別名
  • 愛するものについてうまく語れない : 『わがスタンダール』を通じて見たスタンダリアン大岡昇平
  • アイスル モノ ニ ツイテ ウマク カタレナイ : 『 ワガ スタンダール 』 オ ツウジテ ミタ スタンダリアン オオオカ ショウヘイ

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抄録

type:Article

『野火』などの作品で知られる小説家の大岡昇平は、同時に優れたスタンダール研究者でもあった。研究者としての大岡の活動は次の三つの時期からなる。戦前から戦中にかけて『パルムの僧院』を主要な対象としていた第一期(1934-1944年)、より俯瞰的なヴィジョンを獲得し、『赤と黒』の劇作化、『スタンダールの生涯』へとつながってゆく戦後の第二期(1948-1973年)、そして『アンリ・ブリュラールの生涯』に注目し、「エゴチスム」、「自伝的物語」の問題へと関心をうつしてゆく第三期(1977-1988年)である。なかでも本研究は、こうした研究活動の最晩年に大岡が若かりし頃の読書体験に立ち戻り、自身の「読むこと」と「書くこと」を結びつけようとしていた点に注目したい。大岡にとってスタンダールは、愛するが故に決して語りきることのできない対象であった。晩年の大岡はそうした二律背反に真摯に向きあう作業を通じて、創作のかたちをとった自伝的物語という豊饒な世界を切り開いてゆくのである。

identifier:京都工芸繊維大学 学術報告書,第5巻,2012.06,pp.7-17

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